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落語家と寄席の始まり
江戸時代、寛政10年(1798)6月に、馬喰町で櫛職人をしていた京屋又五郎が、山生亭花楽と名乗り「風流浮世おとし噺」の看板を掲げ、下谷稲荷社(現下谷神社※)の境内の賭け小屋で、一般の人を対象に木戸銭を取って落語を聞かせました。
これが江戸における職業的な落語家と寄席の始まりと言われています。
それから明治維新を迎えるまでの70年間に、江戸の町に寄席の数は百七十軒以上を数えるようになり、落語家の数も増えていきました。
寄席が始まる以前から、江戸落語は座敷噺、会噺として発展しており、落語自体の歴史は三百年以上とも言われています。
第二次世界大戦中、落語家は満州慰問を行っており、昭和元禄落語心中では、この事実が登場人物の運命の起点として描かれています。
落語家が創り出す噺の世界観は、江戸から明治、大正、そして昭和、平成と、その時々の落語家の個性によって深みを増しながら、一つの文化として現代に至るまで脈々と受け継がれてきました。
落語には普遍的な日本の四季や生活様式、さらに人情が埋め込まれていることから、令和になった今もなお、人々の共感を呼ぶ大衆文化として根強い人気を博しています。
※下谷神社:東京都台東区東上野3-29-8
http://shitayajinja.or.jp/

寄席発祥二百年の記念碑
寄席と正岡子規の俳句
正岡子規は明治27年(1894年)から35歳で没するまで台東区根岸に8年間住み、ここで友人や門弟たちと句会などを開催して俳句を詠みました。
その中のひとつ、江戸で初めて寄席が催された「寄席発祥の地」を詠んだ、
「寄席はねて 上野の鐘の 夜長哉」は、
現在下谷神社境内の句碑に刻まれています。
こちらの特設サイトにあるイラストは、雲田はるこ先生が実際に下谷神社を訪問し、宮司さんに取材をさせていただき、この句をイメージしながら描いてくださった作品です。

一環で下谷神社境内に建てられた句碑

描かれたイラスト
落語の世界の階級制度

落語家になるには、真打の落語家に入門する必要があります。
特に試験や資格などを必要 としない反面、すべてが師匠の胸三寸で決まる世界。
落語家(東京)には階級があり、厳密には前座になってから、落語家としてのキャリアがスタートします。
前座
師匠から高座名(芸名)をもらい、所属団体にも登録される。
寄席や落語会で楽屋仕事をしつつ、“勉強のため”に開口一番で高座に上がり落語を演る。
二ツ目
師匠の雑用や楽屋仕事から解放される。紋付、羽織、袴の着用が許される。
落語家として一人前の扱いを受ける一方で、自分で仕事(出番)を作ることが必要に。
真打
寄席で主任(トリ)を取れる。周囲から「師匠」と呼ばれるようになり(それ以前は「師匠」とは呼ばない)、弟子を取ることが可能になる。
落語家はどうやって
噺を覚えるのか?
落語界では、自分の師匠以外からも稽古をつけてもらえます。
覚えてきた噺を一対一で披露し、許しが出れば高座にかけてもいいことになり、これを「あげる」と言います。噺の覚え方は、かつては「三べん稽古」といって、師匠が弟子に同じ噺を3回聞かせていました。
しかし、録音技術の発展とともにテープやICレコーダーに録音したり、師匠によっては既存の音源で覚えてもいいようになっています。

落語家が着る着物の種類

前座は主に着流し姿で、夏場は浴衣で楽屋仕事をすることもあります。
二ツ目以上になれば、紋付を着たり、袴を着用したり、羽織を羽織ることが許されます。
着物の種類
着流し / 浴衣 / 紋付 / 袴 / 羽織 / 夏羽織
落語家が高座で用いる道具
落語家が高座で使用する道具は、基本的には扇子と手ぬぐいだけです。
これらをさまざまな物に見立てて噺を進めていきます。
扇子
箸や刀など物に見立てる以外にも、戸口を叩く音を出すときに扇子で高座を叩いたりする。
キセルや煙草に見立てる場合は、扇子を実際に口にくわえることも。
手ぬぐい
財布や紙入れ(紙幣や手紙、懐紙を入れる)、手紙、本などに見立てる。
見立て以外にも、高座で汗をぬぐう際にも用いる。
その他の道具
座布団 / 湯飲み / 張り扇 / 小拍子

寄席とは?

寄席とは演芸を専門に行う劇場(演芸場)のことです。
寄席の番組(プログラム)には落語だけでなく、講談や浪曲も含まれます。
また、出し物には色物(漫才、手品、紙切りなど)もあり、落語以外の演芸も幅広く楽しめるようになっています。
寄席興行は、昼席(昼の部)と夜席(夜の部)があり、小屋によっては深夜寄席も開催しています。
落語会の形態
寄席以外の場所でも落語会(落語のみ)は開催されます。
大きい場所ではホールがありますが、ライブハウスや居酒屋なども会場として使われます。
落語会が開催される場所
歌舞伎座 / ホール / 学校 / お寺

落語会の種類
独演会:一人の落語家を見る会
一門会:一門が顔を揃える会
親子会:師匠と弟子、二人会
兄弟会:兄弟子と弟弟子による会
二人会:気の合う落語家同士の会

亭紋

落語家の芸名は「亭号+名前」で構成されています。
亭号には三遊亭、古今亭、柳家などがあり、江戸時代から受け継がれているものも多くあります。
一門ごとに家紋に相当する亭紋が存在します。